巴金逝去五周年記念「2010巴金論壇」「“巴金・上海”展覧」など

10月11日から17日まで上海に行ってきました。15日に世博会に行ったことは既にレポートした通りですが、授業期間中、しかも授業再開直後に教授会までお休みして博覧会見物ということはない、ちゃんとした御用もあって、それは「2010巴金論壇」というのに出て、ちょっとした報告をすること、それから「“巴金・上海”」という展覧を見てくることが主たる内容です(他にも色々あったのですが、アリバイを主張するわけではないので、それは省略)。11日出発に際しては、予約していた新宿発の成田エクスプレスが、南浦和の人身事故の影響で運休になってしまい、少し慌てました。いつものように、昼飯で一杯、イイ気分になって、出国後ももう一杯なんて余裕はちょっとなかったなぁ(実は学生も一緒だったので、あまりみっともないことも出来ず…)。

これは昼飯の「酒肴セット」というもの。前にも載せたことあったかな(?)。別に美味くもありません。これにビールもしくはお銚子がついて、1500円くらいしたかな。

上海到着後、普陀区が用意した宿のロビーにあった案内。ウ~ム、このレベルのホテルに泊まるのは、随分と久し振りのような気がします。ロケーションも凄い場末の感じで、到着の晩の食事が終わり、皆で河岸を替えて、どこぞで茶でも啜りながらお喋りしようといっても、15分以上歩いて、大渡河路の区人民政府近くまで行かねば「上島珈琲」すらない有様。フ~ム、上海にもまだこういう所があるのですねぇ。

今回はipodを持参して携帯スピーカーに接続。上海の場末の寂しい宿に響くIvan Linsです。

これが「2010巴金論壇」その他の会場、普陀区図書館1階ロビーの様子。今年の初めに2億元を投じて開館したばかりの、新しい建物です。色々と意欲的にやっていこうという、それに作家協会が一枚噛んだという、まぁそんな具合らしいです。

図書館2階(?)のスペースで、一連の活動開始のオープニングセレモニーが開かれました。

セレモニーの最初は区の小学生が4名登場して、巴金にオマージュをささげます。ン?今日は火曜日ですけど、学校は?

開幕式が終わり、10階に移ると、そこでは手稿(陸正偉さん曰く、みんなコピー)と、各種版本の展示。ここはそもそも、作家のマニュスクリプトを収集して展示するスペースらしいです。

展示風景はこんな感じ。会場が新しいので、それなりに立派な感じはします。

特に珍しいものを見たという感じはしませんでしたが、それでも幾つかの本は初めて見ました。

こういう感覚はいまだによく分からないですが、巴金の作品名を篆刻作品にした人がいて、それも展示されていました。作者は大連の人で、多分周立民くんのお知り合いでしょう。

『第四病室』の原稿(部分)。巴金自身は毛筆で殴り書いたようなことを回想していますが、案外きれいに書かれていると思いました。

こんな感じで、こじんまりとしたミニシンポ。10時半から始まって、休憩を挟み、17時過ぎには終わりました。

宛がわれた飯ばかりというのも詰まらないもの。これは学生と食った「美林閣」(上海書城福州路店の裏)の昼飯。「糟」5種盛り合わせなんて、ピエールが悔しがるであろう好物。昼から少しお酒を過ごしたような感じでしたが、食後はキッチリ宿に戻って、本の校正をやりました。

10月16日の土曜日には、徐匯区の青少年活動中心という所(昔の名称は少年宮ですね)で、「巴金・上海」という展覧が始まりました。この日は好天に恵まれました。

開幕式のテープカット。右2は王安憶さん、右3は巴金の弟・李済生老人。李老は昨秋には随分衰えたような感じで心配でしたが、今回はお元気に見えて一安心。もう93歳だそうで。

展示の始まりはこんな感じから。実際見るまで分からなかったことですが、要するに上海市作家協会としての巴金逝去5周年記念行事のメインがこの展覧で、やはり気合いの入れ方が違いました。李小林さん(巴金長女)も、こういう場所には余りお出ましにならない方ですが、この時はお出でになって、お昼の食事も一緒でした。

“文化大革命”時期の迫害の資料。こういうものはやはり本場ならではの展示品です。

「人民作家」っていうのは、ちゃんとこういう風に「授与」される称号なんですね。証書を見て、初めて理解しました。

展示会場の壁面。各種著作の表紙です。

会場には書斎の一角も再現されています。

このような感じの展覧でした。当日は早く会場に到着してしまったので、無人の会場をゆっくり見ることができました。

暫くすると、隣のホールで、多分中学生くらいではないかな、地元の子供を集めて「走近巴金文化講座」という講演会が開かれました。壇上にいるのは左から陳思和、宗福先、李輝、陳喜儒の各氏。1時間ちょっとで終わりました。

全ての御用を終えて、買い物に出た南京路歩行街で、ビビアン嬢とツーショットです(笑)。しかし、この日の南京路は想像を絶する人の数。これまで数え切れぬほど来ていますが、初めて見たといってもイイほどの混雑ぶりで、すっかりイヤになりました(…)。

今回の上海行、出掛ける前は比較的ゆったりした日程のように思いましたが、何やかんやで慌しくなってしまいました。どうしてでしょう?律儀にこっちの友達にも、あっちの友達にもなどと声をかけていると、どうもこういうことになるらしい。どうも出版関係で用事が幾らか残ってしまったので、今年中に行けたらもう一度行きたいものですが、さて時間が取れるかどうか…。

上海万博(世博会)見物

10月11日~17日の間、巴金逝去5周年を記念した小型のフォーラムと展覧があるというので、上海に6泊で行ってきました。フォーラムその他は12日の一日だけ、展覧の開幕は16日というわけで、その間の15日にそろそろ閉幕も近くなってきた上海万博(世博会)の見物に行って参りました。まぁこのような博覧会の類、日本でも行ったことないし、噂では凄い人出だというので、余り行きたくはなかったのですが、知人が是非とも見なくてはと引っ張って行ってくれたということ。前の晩は結構晩い時間まで強いお酒を呑んでいたのですが、この日の出発は朝の7時45分でした。静安寺から地下鉄(何号線だったか?不肖ポコペン、上海の地下鉄については万博前の認識しかないので、5号線より後は全く分からず。多分7号線とか9号線だったのではないかな?)に乗って、いざ出発!

これは「後灘」という駅で地下鉄から降りたところ、会場の8号門(団体入口)近くに出来ていた行列。時間は開門前の午前8時20分くらいです。

こんな具合に旅行社を探し出して、持参の切符を入場券に引き換えます。案内のY教授は、旅行社に依頼すれば、団体としての特典があると思っていたらしいですが、全くそんなことはなく、単に入場券と引き換えるだけ。後は勝手に並んで入れだって(?)。これで旅行社に儲けが出るとしたら、まぁ一種の犯罪行為ではないかな。

で、ようやく第一関門を潜り抜けると、このような行列用の設備があります。

どういう並び方をするのが“正しい”のか、さっぱり分からぬまま、結構走ったりして、ようやく安全検査の行列となりました。

安全検査も済ませて、ようやく会場内に入りました。朝一番のせいか、まだ人の数は少ないようです。あぁこれなら案外悪くないねと思ったのが全くの誤解であることは90分後にはよく分かりました。

アメリカ館。入りませんでした。

ブラジル館。アマゾンのジャングルのイメージでしょうか。ここはちょっと興味があったので覗いてみました。

これはオマケ。ブラジル館の前にぶら下がっていた看板。確かに中国人は声がデカい。でもそれは“文明”とか何とかってのとはちょっと違う問題のような気もします。そういえば喫煙場所指定は、時間が経つに連れて段々守られなくなりますが、こちらは“文明”の問題でしょう。

さすがブラジル。天井にはカナリアイエローのサッカーボール。

館内中央にあった、四方を囲む形のスクリーンでは、色々な土地の様々な人々がサッカーボールを蹴って、リレーしていく映像が映し出されていました。それが四方を転々としていくのは面白いけれど、目まぐるしい。中にジルベルト・ジルの歌っているシーンもチラと出てきたりして(彼は確か文化大臣かなんかだったな)、最後はゴ~~~~ルっってことになります。すると、このようにスタジアムを埋めたイエローボードがワァッと掲げられて、BRASILの文字を見せるという具合。イヤ、なかなかよく出来ておりました。

これは中南米諸国が一つの建物に集まっているパビリオン。ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ホンジュラス等々です。ここは全く人気がないというか、少なくとも午前の早い時間帯から人が集まり行列を作るような人気館ではありませんでした。

パナマのブースはこれだけで、他には何もありません。これは何かといえば、パナマ運河の模型です。ウ~ム、これしか見せるものがないということか?

キューバ館。社会主義国家というのはやはり珍しさを感じるので展示も見学しましょう。この色遣いはなかなか素敵です。

キューバの名産といえば、バナナ、コーヒー、そしてハバナの葉巻。

かくいうこのポコペン、病気をしてからこちら、かつてのダラしない喫煙習慣からは卒業しましたが、実は趣味として葉巻には凝ってみたいという野望を持っております。で、一つ記念に買ってもいいかなとお値段を見ますと、やはり結構お高いですなぁ。というか、より正確にいえば、これが高いのか安いのかすら分からないので、残念、見送りました(結局帰国時に免税店で店員のアドバイスを得て、少しだけ細手のものを購入しました)。

ベネズエラ館の前にあったシモン・ボリヴァルの銅像です。英雄ですね。

ベネズエラ館は建物が結構モダンな感じ。内部は基本的に映画を見せるだけで、それなりに快適そうなミニシアターがありました。

国家建設、富裕化を、社会主義、革命、平等などという理念とともに、高らかに謳うのはベネズエラだけのような気がします。中庭には何かの新素材でしょうか、白い布切れがバァーッとぶら下がり、其処彼処に写真のような評語が縫い付けてありました。ちなみに同行のY教授に言わせると、この白布、中国でいえばお弔いだって(笑)。なんか穿ったような発言だなぁ。しかし、小さい国でもみな豊かになりたい、強くなりたい、そういう願いは切実で、それは理解できるというか、その切実さには胸を打たれるのですが、このネオリベの世の中、豊かさや強さの意味合いが一挙に均質化、平板化しているようです。その中で、このベネズエラの高らかな調子には、清々しく、毅然としたものを感じました。シモン・ボリヴァルの解放の理想を裏切るまいという姿勢の顕れでしょうか。

カナダ館。入りませんでした。というか入れなかった。この時点で午前11時を回り、ふと入場者数を示す電光掲示を見れば31万人とかありました(!)。人気館はいずれも長蛇の列で、体調のせいで疲れやすい私は初手からパスです。

アフリカ大陸のエリアに入りました。左からアルジェリア、アンゴラ、ナイジェリアのパビリオン。

結構人気のエジプト館を横目に眺め…

ブラジルと来たからにはアルゼンチン館にも入りたかったけれど、ここもかなりの行列なので諦め…

南アフリカはやっぱりマンデラさんかと納得して…

結局、中南米連合館同様に、アフリカ諸国が一堂に会しているパビリオンに入って行きました。ここの中央部はアフリカのバザールの様子を再現しているということで、民芸品の類を売っております。結構な人だかりですが、案外義烏あたりの“小商品”じゃあないのかな(笑)。南アフリカのサッカー・ワールドカップで一挙に知られたブブゼラだって、みんなMade in Chinaだったそうだし。しかし、スーダンにせよソマリアにせよ、中国がアフリカで何やってるかなんて、この“バザール”に群がる“善良な市民”は何も知らないんだろうな。

どこかの国の展示にあった素朴な木琴。一緒に落花生とカカオ豆が展示されていました。そんなものしか展示品がないのだろうけれど、でも一所懸命なんだな。難しいことはよく分からないけれど、貧しいけれど頑張ろうという、そういう健気さには感動させられます。

ルワンダの展示ブースで出迎えるゴリラくん。あまりWelcomeじゃないみたいな面構え(笑)。

これはエチオピア館にあった類人猿の骨格標本。詳しいことは忘れましたが、“人類の母”と呼ばれる“ルーシー”の骨格だと思います(多分)。

アフリカ諸国連合館の出口。人はいよいよ多くなってきました。

ヨーロッパ地域のエリアに入りました。やはりここら辺に人気館が集中しています。手前がイタリア館、奥の変な格好の建物はイギリス館。陳子善さんに言わせると、イタリア館でエスプレッソを一杯飲んで出てくるだけで万博は十分なんだそうな(?)。

オランダ館。チューリップの格好なんでしょうか?何でもゴッホの絵を持ってきたとか。もちろん入りませんでした(笑)。これでヨーロッパともお別れ。

で、最後はアジア地域のエリア。これは中国館。閉会後も壊さずに保存公開するとのこと。見たければ、いつか人のいなくなった頃に行けばイイや。

アジアエリアに立っている標識の塔です。

タイ館。この頃になるともう人山人海、もう人気不人気関係なし、いずこも入場待ちの長蛇の列。

ネパール館。

インド館。ン?土饅頭じゃないか。

レバノン館。何と書いてあるかさっぱり分からず。

イラン館。ちょっと覗いてみたかったけどな。

で、これはお目当ての一つ、北朝鮮館。めったに行けない所ですから。フ~ン、結構立派な建物だな。

しかし、内部は一体何を展示しているのか分からない不思議な空間でした。左に主体思想塔のレプリカが見えます。

何を売っているのかと思われる売店ですが、ここにも人が群がっていました。記念切手とか、朝鮮人参とか、後は民芸品の類かな。

というわけで、すっかり疲れて、14時半頃には会場を後にしました。まぁ思ったより面白かったような気もしますが、見なくても一向に残念じゃない、そんな感じのイベントでした。Y教授に言わせれば、これは大廟会なんであって、そもそも中国人は物見高いからワサワサ集まるのだそうな。運営や施設などは、良くも悪くもMade in China、観客の“文明”度は想像のつく通り。もう会期も最後に近づいていたせいか、全体に薄汚れた感じでした。こちらがもっと元気で、もう少し気のおけない連れが一緒であれば、夜景まで見て、晩飯食ってから帰ってもイイかなと思いましたが、そうしなくとも別に後悔はしておりません。